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男性性機能障害と不妊治療

[2017.03.30]

 男性不妊の主要原因の一つとして男性性機能障害があります。男性性機能障害には勃起障害(Erectile dysfunction: ED)と射精障害(Ejaculatory dysfunction: EjD)がありますが、両者の区別が明確でないこともあります。射精障害(EjD)はさらに性交渉以外では射精できる膣内射精障害とそれ以外に分類されます。これらの男性性機能障害の原因は様々で、心因性(精神的な原因)と器質性(血管や神経が原因)に分類されますが、両者の混合型もあります。射精は神経反射現象であり、勃起と異なり必ず物理的刺激が必要となります。一方で勃起は視覚のみでも可能であり、必ずしも物理的刺激を必要としません。そして弱い物理的刺激で射精してしまうのが所謂早漏ですが、その対極にあるのが遅漏です。膣との摩擦より強い物理的刺激でないと射精できなくなってしまった膣内射精障害は広義には遅漏に属するものと考えられます。器質的原因としては高血圧を起こしている動脈硬化、糖尿病に起因する神経障害などの内科疾患が根本の原因となっている場合が一般的で、男性機能障害の治療には心因性に対するカウンセリングとともに泌尿器科と内科の知識と診療経験が要求されます。

 受精着床学会雑誌の最新号に関西の施設より、こうした男性性機能障害の治療により、どの程度不妊治療のステップダウンが可能になったかに関する報告がされました。それによると高度生殖医療施設で泌尿器科医が男性パートナーの治療に当たった場合、顕微授精が不要となったステップダウンの成功率は93%であったそうです。その一方で高度生殖医療施設で産婦人科医が男性パートナーの治療に当たった場合はステップダウンの成功率は67%と低かったとしてます。

 この調査結果は顕微授精の回避率をスタップダウンの成功率と定義しており、体外受精や人工授精での妊娠もステップダウンの群にカウントされていることになります。しかし女性に不妊原因が無ければ、本来は自然妊娠を達成するのが男性不妊治療の目標です。高度生殖医療施設で泌尿器科医が非常勤勤務で行う男性不妊外来では決まった曜日や時間帯でしか診療できないため、どうしても仕事で忙しい男性パートナーはドロップアウトしてしまいがちです。その結果として顕微授精などの高度生殖医療にステップアップしてしまう傾向は否めません。一方、診療日や診療時間の制約なく男性パートナーの診察を受け入れられる男性不妊専門施設では、産婦人科との綿密な連携とともに、男性パートナーへのより的確な治療とフォローが容易となりますので、自然妊娠や人工授精までの一般不妊治療による妊娠(ステップダウン)がよりしやすくなってきます。 

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