他院で複数回micro TESEを行なって不成功だった方からFNA Mappingを経たdirected micro TESEにより片方の小切開のみで運動精子が10本凍結できました!
[2023.10.17]
他院で複数回micro TESEを受けて不成功だった方にFNA Mappingを行い、精子形成が特定された場所にdirected micro TESEを行い、執刀開始からものの15分程度で運動精子を確認して10本で凍結保存しました。
精子が確認された部位は精巣の辺縁部で、FNA Mappingで場所が特定されていなければ、micro TESE単独では回収が極めて困難な場所でした。micro TESEに熟練するには相当の手術経験を積む必要がありますが、今回のケースでは熟練者であっても精子を見つけることはできませんでした。
FNA Mappingは3年間のプログラムを積めば、誰が行っても精子の見落としをほぼ無くすことができるのですが、認証を受けるまでのその費用と時間は個人負担となることからハードルが高く、日本では小生しか行っておりません。一方でmicro TESEが2022年4月から保険適応となり、大学病院や総合病院で全身麻酔かつ2泊3日で行えば80万円以上の診療報酬となったことから、十分なトレーニングを経ないまま泌尿器科医に執刀させる医療機関が昨今増えていますが、家族の一生を左右する手術なだけにこれで本当に大丈夫なのかという懸念を持たざるを得ません。
過日、衆議院議員の岡本章子先生、東北大学医学部長の石井直人先生、FNA Mappingの診断をご担当いただいている東北大学医学部臨床教授の病理医遠藤希之先生にクリニックにおいでいただき、micro TESEの現状の問題点とFNA Mappingの今後の展望につき、小生自らパワーポイントを用いてプレゼンテーションをいたしました。思い返せば2004年に東日本では最初と思われるmicro TESEを東北大学病院で導入した際は、micro TESEという手術点数が存在しなかったため、精巣生検という数千円程度の検査に、全身麻酔と2泊3日の入院で行った結果、検査代より高額な麻酔や入院費は認められないという理由で査定されました。そのため体外受精施設に拠点を移して自費診療としてmicro TESEを2000年代で国内おそらく最多と思われる症例数を実施し、国内で初めてとなる無精子症の妊娠率を権威ある論文に発表しました。その後micro TESEに助成金が出るようになりましたが、micro TESEの精子の見落としと男性ホルモン低下のリスクに国内でいち早く気づいて、FNA Mappingを導入をしました。
小生がmicro TESEを始めた頃もそうでしたが、世の中に認知されていないことではあるが、患者さんの最善のために道を開いていくことは常に困難を伴います。しかし他の医療機関で不成功であった方々を成功に導く、この喜びは医者冥利に尽きます。これからも地道にTraiblazerとして努力を続けて参ります。