FNA Mappingとmicro TESEの歴史的背景と最新の知見につきinvited reviewを国際生殖医療雑誌RMBに掲載しました!
日本生殖医学会より依頼を受け、無精子症の治療の歴史的遷移とともに最新の知見まで100本以上の論文をまとめたレビューが受理され、ついに世界に向けて公開されました。FNA Mappingを導入する前はmicro TESEを年間100例ペースで2004年から2016年まで実施してきました。実は2014年にはmicro TESEを絶対的に支持するレビューの論文を発表してました。その後特に日本では無精子症の治療に対して盲目的にmicro TESEに偏ってしまい、無精子症の病理が理解されずトレーニングが不十分なまま未熟な手術が提供されている問題が生じています。今回の論文ではFNA Mappingによって初めてmicro TESEの真価が得られることを力説し、医師は両方の術式に熟練することが重要であると結論しました。二つの論文につき英文ですがご覧いただければ幸いです。
FNA Mappingをよく理解しないまま未熟な投稿を自院のホームページに載せておられる専門医が時折おられますので、いくつかここで取り上げてみたいと思います。
1:FNA Mappingでは採取した精子が無駄になる。→FNA Mappingでは極少数の精子しか採取しません。FNA Mappingにより精子が存在しない非閉塞性無精子症の2/3以上の患者さんに無駄な両側精巣の切開が避けられて後遺症を回避できること、精子が存在した場合は片方の精巣の小切開か切開せず穿刺吸引で済むことを考慮すると、FNA Mappingで採取した精子が無駄になるという論旨そのものが無意味です。非閉塞性無精子症の2/3以上を占める、micro TESEで精子が見つからなかった患者さんは術後の痛みや後遺症とともに精神的ダメージを負うことになります。一方でFNA Mappingで精子が確認されればその後のdirected micro TESEでほぼ100%で妊娠に十分な精子を回収でき、執刀開始から精子回収までの平均時間は23分となります。
2:FNA Mappingは開発者の権利関係で高額である。→米国ではmicro TESEは$20,000、FNA Mappingは$6,000で行われており、FNA Mappingにより医療費削減効果が得られています。日本ではmicro TESEを大学病院などで全身麻酔2泊3日で実施した場合、840,000円ほどになり実はFNA Mappingよりも高額となります。micro TESEは実際の精子検索時間は2時間程度ですが、FNA Mappingでは専門的なトレーニングを受けたスタッフによる通常合計で36時間あまりの検索が行われます。そしてFNA Mappingのライセンスを取得するのには相当な時間と金額がかかりますが、それは開発者であるDr. Turekの権利を守るためではなく、施術の質を高く維持するための措置です。ライセンス制度がないまま保険適応となったmicro TESEの質が著しく偏っている日本の現状についても論文で指摘してあります。