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micro TESEが男性不妊診療ガイドラインでセルトリオンリー症候群で必要と記載された誤りについて

[2024.07.10]

このたび日本泌尿器科学会から発刊された男性不妊治療ガイドラインでは随所に編集者の私見が盛り込まれています。その最も顕著な記載が、セルトリオンリー症候群いわゆるSCOではmicro TESEが必須であるという部分と本邦ではSCOのNOAにおける割合が高いので、NOAに対してmicro TESEが必要な状況であるという部分です。micro TESEを始めた頃の2004年ごろは私もそう感じておりましたが、1500例以上の執刀を経て、micro TESEのデメリットに気付かされてFNA Mappingを導入してからは、考え方が大きく変わりました。まず日本ではSCOがNOAに占める割合が高いのは事実ですが、局所的に精子形成のあるSCOはlocalized patternとpatchy patternがあり、各々半々ぐらい存在します。前者は左右の精巣の中で極めて限局された局所でしか精子形成が存在しないのに対して、後者は左右精巣全体において大部分がセルトリオンリーでありながら、全体にわたって小さい点状に多数の精子形成が存在します。したがって後者ではmicro TESEは全く不要で、一切切開せずに細い針を用いたFNAという手法で妊娠成立に十分な精子回収ができます。その一方で前者はmicro TESE単独では29%もの症例で精子の見逃しとなることが報告されており、FNA Mappingの結果に基づいたDirected micro TESEが必要です。本邦ではmicro TESEによるNOAの精子回収は一般的に20%台とされており、大多数の方に無益な両側の精巣への切開が行われることになります。したがって本邦では欧米以上にNOAに対してmicro TESEをいきなりするのは実は向かないのです。ちなみに既に論文報告されていますが、FNA Mappingを導入した結果、micro TESEが必要とされたケースは11%に過ぎませんでした。ガイドラインのこれらの誤った記載は編集者の中途の手術経験に基づいた私見に基づくもので、真実ではないことに注意しなければいけません。

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