FNA Mappingのトレーニングを終えて
5月14日から5月26日まで米国サンフランシスコのThe Turek ClinicでFNA Mappingの集中トレーニングをしてきました。ちょうど全米泌尿器科学会(AUA)総会が行われており、世界中からaspiring andrologist(志の高い男性不妊の専門医)が集っておりました。学会発表ではmicro TESEにまつわる新しい話題はほとんど出ておらず、逆に米国と英国でmicro TESEで過度に組織を採取してしまったことによる男性ホルモン低下のため生涯男性ホルモン補充を余儀なくされた患者集団からの訴訟が米国と英国で起こっていることを耳にしました。FNA Mappingはこうしたホルモン低下を起こさないよう、精子回収の手技をより効率的に非侵襲的に実施するために考案された手術手技です。トレーニングではDr. Turekによるワンツーマンの指導、動物の組織を用いた練習、病理専門医とプレパラートを見ながらの精子確認の練習、細胞検査士との打ち合わせとプレパラート作成の見学など多岐にわたり、最後に筆記試験が行われました。米国で改めて感じたのは、各スタッフのプロフェッショナルとしてのレベルの高さとロボットとAIを駆使した最新のテクノロジーでした。米国は市場原理が重んじられる実力主義の社会であり、単なる資格保有や専門医取得で既得権が得られてしまう日本とは大きな相違があります。Dr.Turekはこれまでmicro TESEで精子が回収できなかったケースからもFNA Mappingで精子発見に成功してますが、逆にFNA Mappingで精子確認できていないケースからmicro TESEで精子を回収できた例はDr. TurekがFNA Mappingを実施したケースでは皆無であったことをmicro TESEの権威である専門医も認めた模様です。一方でThe Turek Clinicでのトレーニングを経ずしてFNA Mappingが実施されたケースではmicro TESEの権威とされる専門医によるmicro TESEで精子回収されたケースはあったそうで、FNA Mappingにせよmicro TESEにせよ、十分なトレーニング無くして、良い結果を得ることはできないということではないでしょうか。トレーニング以外ではDr. Turekと食事を楽しんだり、サンフランシスコジャイアンツの試合を見に行き、延長12回で残念ながら負けてしまいましたが、その帰り道で歩きながら色々話をしました。思い切って聞いてみたところ、UCSFの教授職を捨ててまでやりたかったことがあったお話など伺い、現在進んでいる研究結果に米国を代表する企業が投資していることなど伺いました。ここまで著名でありながら、政治力、権威そして権限を追求するのではなく、医師、研究者として日々を送られ、そしてenterpreneur(企業家)としての非凡な資質と熱意を感じました。6月のアンドロジー学会(神戸)の招請講演にはご家族を連れて来日されるそうで、またお会いすることになっています。今後当院ではThe Turek Clinicと綿密な連携を取り、FNA Mappingを積極的に取り入れて、micro TESEと共に行っていきます。