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micro TESEが必ずしも全ての非閉塞性無精子症にとってベストな術式ではない可能性あり

[2017.01.31]

 非閉塞性無精子症に対するmicro TESEの妊娠率を本邦で初めて2008年に仙台から論文発表し、これまでmicro TESEを粛々と継続してきました。精子までの全ての成熟段階の細胞が欠損している、最も重症とされるセルトリオンリー症候群ですら、手術用顕微鏡でピンポイントで精子を造っている精細管を選択的に採取できるのは、この術式ならではの醍醐味です。そして提携ART施設との連携により、これまで多数の妊娠出産例を輩出し、micro TESEの有効性と安全性を例証してきました。

 そして昨今micro TESEは非閉塞性無精子症の治療の主流となり、あちこちで実施されるようになりました。しかし大手の施設でmicro TESEを受けられるも精子が回収されず、当院に相談される方が増えてきました。実際にお会いしてお話を伺うと、手術をしっぱなしで、精子が見つからなかった場合、フォローがうまくできていないように見受けられます。micro TESEの醍醐味は究極の無精子症から精子を回収して妊娠出産を達成することですが、精子が回収できなかった場合の患者サポートで医師とクリニックの力量が問われていると言って過言ではないでしょう。

 実はmicro TESEを13年間にわたって実施してきた結果、micro TESEが向かないケースもあると感じるようになってきました。micro TESEは精巣の表面の観察には向いていますが、深部の観察はやや苦手です。それでもblunt dissectionと言ってマイクロピンセットで精巣奥まで傷つけることなく分け入りながら深部まで観察できる場合は問題ありません。しかし精巣が比較的大きく、精巣の組織が固く、先のblunt dissectionが困難で、組織を切開しないと奥まで観察できない場合は、出血で視野が悪くなるため、あまり無理はできません。それでも手術を強引に進めると、組織のダメージが大きくなって男性ホルモンが下がって回復しないことから、生涯にわたり補充が必要になってしまうことがあります。実際他院でmicro TESEを受けられてから男性ホルモン低下により体調不良となり、当院でホルモン補充をしている方もおられます。

 こうしたmicro TESEが向かないケースに一つの新たな可能性が出てきました。米国からmicro TESEとは異なる術式の成績が報告され、micro TESEで精子回収不可であったにもかかわらず、非閉塞性無精子症で最も重症とされるセルトリオンリー症候群の31%で精子回収に成功したことが学会報告されました。そこで昨年米国までその手術を見学に行ってきましたが、micro TESEで著名な医師の元でmicro TESEを受けて精子が見つからなかったケースでもその術式で精子回収に成功していました。そこでそのmicro TESEで著名な先生に、世界中から男性不妊専門医が集まった学会場で意見を求めたところ、その結果は先に実施されたmicro TESEの術者の力量如何とやはり私が考えていた精巣の個人的差異に依ると述べられました。

 今後micro TESEとその術式につき、使い分けて手術を実施していく準備を進めています。尚、その術式については米国で商標登録されており、詳細を公開できませんが、術式を考案した先生に今年仙台においでいただき講演をしていただけることになりました。

 泌尿器科学の恩師である東北大学医学部泌尿器科前教授の折笠精一先生より、私が研修医の頃、優れた術者は一つの術式だけ覚えてそれだけするのではなく、幾つかの術式の長所短所を理解して患者に合わせて使い分けるものだという教えを受けました。非閉塞性無精子症に対するmicro TESE単独では決して満足出来る成績ではなく、その言葉の意味をかみしめています。

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