膀胱・精巣の病気
膀胱・精巣の病気には、膀胱炎、膀胱がん、精巣炎、精巣がんなどがあります。
膀胱炎
膀胱炎は、思春期以降の女性に多い疾患です。膀胱炎の主な症状は、排尿痛、頻尿、残尿感、血尿、下腹部痛などです。こじらせると腎盂腎炎になることもあります。発熱や全身倦怠感があった場合は即座に受診して治療を開始しないと重症化することがあります。膀胱炎の診断には尿検査で尿中の白血球の確認します。起炎菌は大腸菌が最も多く数日間の内服薬で軽快する場合が多いですが、薬剤耐性菌などの報告があり、尿培養検査や薬剤感受性検査を実施します。
生活上の注意としては、尿が近くて大変なのですが、水分を多くとること、飲酒や性生活を控える事が大切です。多くは急性単純性膀胱炎で、内服処方の初回治療で完治する場合が多いです。急性単純性膀胱炎は細菌感染によって急激に発症する病気です。性活動期の女性に多く、尿道が4~5cmと男性に比べ短いことが1つの要因と考えられています。不衛生なウォシュレットやビデの使用も好ましくありません。過労、夜更かし・睡眠不足、排尿をがまんしなければならなかった、水分が摂れなかった、寒いところ・暑いところで長時間過ごしたなどのストレスも引き金になります。
膀胱炎を繰り返し発症する場合は、膀胱炎の原因になる病気(基礎疾患)が隠れている事があります。これを複雑性膀胱炎と言います。原因疾患としては、不安定膀胱(就学前の女児)、膀胱尿管逆流症(小児と高齢者)、神経因性膀胱(高齢者に多い、残尿増加、膀胱変形)、膀胱がん、尿路結石などがあります。これらの原因を調べるには泌尿器科専門医の受診が必要です。
その他に以前はあまり知られていなかった間質性膀胱炎という難治性の膀胱炎があります。症状としては通常の膀胱炎のように頻尿や尿意切迫感、さらに膀胱痛のような症状があります。医療機関を受診しても検尿はきれいで細菌性の膀胱炎が否定され、過活動膀胱の内服薬で治療しても症状が改善しない場合は、間質性膀胱炎の可能性があります。症状が改善せず、病院を転々とされている方もおられます。間質性膀胱炎が疑われる際は、入院のうえ麻酔をかけて水圧拡張して、診断と治療を同時に行う事があります。こうした正確な診断には泌尿器科専門医への受診が必要です。
過活動性膀胱
皆さんは「過活動性膀胱(OAB = over active bladder)」という病名をごぞんじでしょうか?実はQOL(生活の質)を低下させるやっかいな病気です。しかも最近の調査で40歳以上の日本人の810万人に「過活動性膀胱(OAB)」の症状があり、その約半数の410万人に尿失禁があることがわかりました。ところが多くの患者さんがどこに相談したら良いかもわからず、年のためと諦めておられるようです。ヨーロッパでは既に薬による「過活動性膀胱(OAB)」の治療が普及していますが、日本ではこの病気がまだよく知られていません。より良い新薬も様々出てきており、お薬を服用するだけで頻尿・切迫感・尿失禁の改善が見られ、より活動的になり人生が楽しくなったなどという声も聞かれるようになってきています。
過活動性膀胱(OAB)では急に尿がしたくなり、我慢が難しい症状があります。また、頻尿を伴う場合が多いのが特徴です。診断は問診票記入と尿検査と残尿測定などの簡単な検査で可能です。ただ、前立腺疾患や膀胱がんなどの疾患にも似た症状があるため、注意が必要です。過活動性膀胱の原因には、女性の場合は骨盤底筋群が弱くなったため、脳血管障害などの神経性、加齢による神経受容体の変化、前立腺肥大症などがありますが、原因不明で突発的に発症する場合も多いようです。
膀胱がん
膀胱がんは、膀胱にできるがんで、自覚症状のない血尿が出た際に注意が必要です。早期発見の場合は、内視鏡の手術が可能ですが、進行している場合は、膀胱の摘出手術が必要になります。血尿が出てもすぐ消えてしまうこともあります。肉眼で見てわかる血尿があった場合は、決して血尿が治ったからと様子を見たりせず、できるだけ早く最寄りの泌尿器科専門医を受診してください。
精巣炎 精巣上体炎
精巣炎は、睾丸炎ともいわれ、睾丸が腫れて痛みを伴う病気です。耳下腺炎の後で起こるムンプス精巣炎が有名です。一方、尿道から細菌が精巣上体という精巣付属器に及ぶと精巣上体炎を起こし、高熱が出たり歩くのが困難になる場合があります。精巣炎、精巣上体炎ともに炎症によって無精子症を引き起こすこともありますので注意が必要です。精巣上体炎では尿検査のうえ、原因菌をつきとめ、薬物による治療をおこないます。精巣炎は多くはウィルス性であるため、対症療法を行います。
精巣がん
精巣がんは、精巣(睾丸)にできるがんで、痛みなどを感じることはほとんどありませんが、精巣が腫れたり、硬くなったりすることで発見されるがんです。青壮年期で最も頻度が高い固形腫瘍です。比較的短期間で転移するため、早期の発見治療が不可欠です。男性不妊の患者さんに見つかりやすいことが知られています。診断が遅れて抗がん剤治療や放射線治療を受けると子供ができなくなってしまいますので、早期診断とともに治療開始前に精子凍結しておくことをお勧めします。