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micro TESEの目標は単なる精子回収でなく妊娠出産である

[2016.10.10]

 かつて絶対不妊であった無精子症は今では精巣精子が回収されれば妊娠出産は可能となりました。特に高度な造精機能障害である非閉塞性無精子症に至っては、顕微鏡下精巣精子採取術(micro TESE)を1999年にSchlegel教授が発表して以来、日本でも追従され、2002年に優れた精子回収率が関西の大学から報告されました。しかしmicro TESEによる精子回収例の妊娠率が論文報告されたのはそれから6年も経てからで、宮城県仙台市の高度生殖医療施設で東北地方の症例の治療結果を集積した2008年の小生の論文です。日本では初めての試みでしたが、高度生殖医療施設でmicro TESEをほぼ連日実施し、カップルから精子と卵子の両方を採取したりもしてました。精子を回収するところから妊娠まで一貫して診療にあたったことで、精子と卵子、受精卵、胚発生、胚移植、着床まで観察できました。当時はまだ精巣精子をなんとか見つけたところで果たして妊娠するだろうかという疑問が持たれていましたので、米国で発表した際はmicro TESEのパイオニアであるSchlegel教授や今ではそれをきっかけに親しくさせていただいている男性不妊専門医のTurek教授の質問攻めにあいました。しかし真実は時間や場所が変わっても再現されるものです。無精子症の精巣精子を用いた顕微授精の妊娠率は一般の射出精子を用いた顕微授精の妊娠率より良好であることは現在では広く支持されています。その理由として精巣精子は新鮮な精子であり、古くなった射出精子より質的に良好であること、無精子症カップルの女性側に不妊原因が少ないことなど考えられています。しかし妊娠成立に重要な因子はそれだけではないように思います。精巣からまぐれで偶然採取できた精子ではなく、顕微鏡直視下に状態の良い組織から回収した良好精子を卵子に入れるということが妊娠成立の上で重要です。実際にmicro TESEで回収した精子の方がTESEで回収した精子よりも妊娠率が良いとする報告も出てきました。小生がmicro TESEで回収した精子を用いればどこの施設で顕微授精しても妊娠は成立していますので、精巣精子を用いた顕微授精そのものは特別高度な特殊技術ではありません。

 精巣精子の射出精子に対する優位性については、その後無精子症のみならず、高度乏精子症、高度精子無力症でも検証されています。高度乏精子症の射出精子は正常人の射出精子に対して質的に劣化している可能性があります。高度乏精子症では正常人のように精巣の中のあらゆる精細管で精子が次から次へと造られているわけではないため、間欠的に造られた精子は精液に出てくるまで相当の期間を要することが予想されます。また高度精子無力症に至っては運動性で精子の鮮度を選別をするのがより難しいと言えます。高度精子無力症では鞭毛の異常に代表される精子の運動能力自体に原因がある他に、教科書には記載されていませんが、精子の寿命が短い、ヒトで言えば早老症のような精子が造られている病態もおそらくあります。そのような場合でも精巣精子を用いることで、そのハンディキャップを克服できる可能性があります。

 このようにmicro TESEは単に精子を回収するためだけの手技ではなく、妊娠を成立されるため、高度生殖医療では欠かすことのできない手技として今後位置付けられてくるのではないかと考えます。

 仙台市で男性不妊治療施設を東北地方で初めて開設し、早くも1ヶ月が過ぎました。連日顕微鏡手術を実施しており、遠方からもご相談に来られる方々が増えてきました。一人でも多くの方々のお力になれるよう、スタッフ一同努めてまいります。

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